Research Topics

歩行者・車両交通流シミュレーションの研究

交通渋滞の評価ツールとして,交通流シミュレーションが実務でも広く使われるようになってきています.しかし,これまでのシミュレーションでは自動車のみ,あるいは歩行者のみを扱うものが多く,自動車や歩行者が混在する状況をきちんと表現できるモデルはほとんど見られないのが現状です.本研究では,自動車よりも自由度の高い歩行者の回避挙動を説明するモデルを構築するとともに,歩行者と自動車等との相互回避行動を表現することで,より一般的な交通現象を表現するシミュレーションの構築を目指しています.


歩行者交通流の特性分析

歩行者は,自動車と異なり,車線によらず360度好きな方向へ移動することが可能です.駅ターミナルなど,様々な方向へ向かう歩行者交通流が交錯する状況下では,交通のパフォーマンスが低下することが考えられます.しかし,2方向以上の流れが交差する交通流の交通容量やサービス水準を算定するための理論的枠組みが未だできていないのが現状です.歩行者交通流特性の把握やマクロ的な交通流モデルの構築を目指しています.


駅前広場の幾何構造条件に応じた利用者挙動特性の解明

交通結節点の1つである駅前広場では,バスやタクシー,乗用車,歩行者等が輻輳し,円滑・安全に関する各種問題が発生しています.しかし,乗降施設や駅入り口などの配置方法については,定性的な指針があるのみで,本来結節点として担保すべき交通機能を十分に発揮するための設計・運用方法が確立されていないのが現状です. 利用者のうち,特に一般車での送迎(キスアンドライド車両)については,バス等に比べても移動の自由度が高く,利用者が自分の希望する位置に止まることによって,後続車両への混雑を引き起こす事象も見受けられます.

本研究では,利用者の送迎時の挙動が,駅前広場の幾何形状や送り・迎えの目的別に変化することに着目し,場所ごとの停車しやすさやその際の運転挙動を定量的に説明するモデルを構築しています.障害物や施設配置の方法によって,同じ需要でも混雑が緩和できる可能性を示しています.


利用者実態に即した歩行者信号制御のあり方の検討

日本では,歩行者の青点滅信号は,「横断を始めてはならず,また,道路を横断している歩行者は,速やかに,その横断を終わるか,又は横断をやめて引き返さなければならない」とされています(道路交通法施行令).そして,点滅信号の長さはこの定義に従い,引き返すことを前提として設計されています.しかし,実際の歩行者が横断をあきらめて引き返すことはまれで,結果として赤になっても横断歩道上に歩行者が残り,安全・円滑それぞれの面で問題となっています.歩行者信号の表示の仕方は,赤点滅,滅灯,そもそも点滅信号に相当する表示がない国など,国によって大きく異なります.また,歩行者に必要なクリアランス時間の設定方法もさまざまです.本研究では,海外の設計事例も参照しつつ,歩行者・自動車それぞれにとって最適な歩行者信号現示の設計方法について検討しています.


交差点の安全性評価

現在実施されている交差点改良などの交通安全対策の多くは,既に事故が発生した地点に対し,現場技術者等の経験的判断により実施されています.安全性を事前に見極め,より的確な対策を実施するためには,科学的・客観的に評価可能な手法が求められますが,既存の交通シミュレーションモデルは主に渋滞評価を目的としており,利用者挙動には幾何構造や信号制御等への感度がないため,安全性評価に用いることは困難です.本研究では,車両・歩行者の挙動の確率分布と道路幾何構造等との関連性を実測結果から分析,モデル化し,シミュレータに組み込むことで,交差点の安全性の定量評価を行っています.