Research

エネルギーと環境に資する『無機機能性材料の設計、合成と加工』、及びこれらを利用した『燃料電池、排ガスセンサ、排ガスリアクタ・触媒の開発』を中心に研究しています。

研究のねらい

我々の研究室では,早くからプロトン導電体(固体内をプロトンが選択的に移動できる材料)に着目し、新しい設計法として固体内での原子価制御によるプロトン欠陥と格子歪の導入によって、豊富なプロトンサイトと多岐にわたる伝導パスを構築する技術の確立に努めてきました。これまでに本手法を用いて、BaZrO3、BaCeO3、最近ではSnP2O7が中温で良好なプロトン伝導を発現することを見出しました。また、これらの材料をデバイス(燃料電池、センサ、リアクタ、触媒)に利用するために、粉体・表面工学に基づくプロセス技術の開発も行っています。最終的には、得られたデバイスの高効率なサスティナブル現象を技術化して、エネルギーや環境問題の解決に取り組んでいきます。

新規なプロトン導電体

我々は岩塩型構造を持つSnP2O7に着目し,これにIn3+をドープした固体酸が温度250℃,乾燥雰囲気において 0.1 S/cm以上の高いプロトン導電率を示すことを発見しました。またこのプロトン導電体は水素ガス中で還元されることなく,イオン輸率がほぼ1でした。さらに電荷担体はプロトンであり,結晶内の格子酸素間をホッピングしながら伝導していることも確認されました(Journal of The Electrochemical Society, 153, A1604 (2006))。


プロトン導電体電解質を用いた燃料電池

100-300℃で作動する燃料電池は固体高分子形燃料電池 と比較して,一酸化炭素に対する白金触媒の耐性向上,反応の活性化による白金量の低減,廃熱の有効利用,熱交換の高効率化などの点で有利です。そこで上述のプロトン導電体を電解質に用いて燃料電池を試作したところ,電解質の厚みが0.35 mmの時に,264 mW/cm2の最大出力を得ることができました。また10%の一酸化炭素を含む水素ガス(モデル改質ガス)を燃料に用いても,電池性能は低下することなく,100時間渡って安定に作動できることも確認しました(Journal of The Electrochemical Society, 153, A897 (2006))。さらに炭化モリブデン-ジルコニア複合体が白金の代替アノード電極になり得ることも見出しました(Journal of The Electrochemical Society, 154, B53 (2007))。今後はこの電解質の特長を活かして,燃料にアルコールやエーテルを使用することなどにチャレンジしていく予定です。

その他の燃料電池
(単室発電)

一般的な燃料電池が燃料ガスと空気を分けて供給するのに対し,我々の燃料電池では炭化水素燃料と空気の混合ガス中で発電することができます。最大出力は400 mW/cm2で,セル作動温度(燃料電池が作動するための開始温度)は500℃です。実にシンプルなセル構造であり,おそらく少々の機械的衝撃には十分耐えられうる燃料電池であると考えられます。また燃料ガスとしてエタン、プロパン、ブタンを使用しながらも、燃料極で炭素を析出することがありません。この結果を学術雑誌 Science (T.Hibino, et al., Science, 288, 2031 (2000)) に報告したところ,トピックスで「New Tigers in the Fuel Cell Tank」 (R.F.Service, Science, 288, 1955 (2000)) と取り上げられました。

なお,最近 同様な研究が学術雑誌Natureでアメリカの研究グループによって報告されています(S. M. Haile et al., Nature, 431, 170 (2004))。

炭化水素ガスセンサ

燃料電池と類似したデバイスとして,自動車用排ガスセンサの研究も行っています。例えば,酸素を大過剰に含むリーンバーン排ガス中の微量(ppm)炭化水素を検知するセンサをこれまでに開発してきました。このセンサは自動車の排ガス管理を行う上で必要とされていましたが,従来の白金電極を使用したYSZセンサでは過剰量存在する酸素ばかりに応答し,炭化水素には全く感受性を示しませんでした。しかし我々が開発した金/酸化インジウム複合電極では以下の特長を持って,炭化水素に対し大きな電圧信号を発生することができました (Electrochem. Solid-State Lett., 1, 197, (1998))。

  1. 炭化水素濃度とともに電圧が増大する。
  2. アルカン<アルケン<アルキンの順で電圧が増大する。
  3. 炭化水素枝分かれ度の順で電圧が増大する。

その他として,改質ガス中の一酸化炭素センサ,リーンバーン排ガス中のNOxセンサ,ディーセル排ガス中の浮遊粒子状物質(PM)センサの開発も行っています。

NOx電解リアクタ

NOxは地球環境では酸性雨,都市環境では光化学スモッグの原因物質であり,ガソリン自動車では古くから浄化対策が施され,大気中へのNOx排出が最小限に止められていました。しかしディーゼル自動車では排ガス中に酸素を大過剰含むため良好な触媒がなく,エンジン制御のみでNOxの発生を抑えることしかできませんでした。

R. A. Hugginsらは1975年に純粋なNOxを窒素に電気分解できることを初めて報告しました(J. Electrochem. Soc., 122, 869 (1975))。さらに我々は純NOxだけではなく,大過剰の酸素が共存する微量(ppm)NOxも適切な電極物質(例えばパラジウム)を使用すれば電気分解できることを新たに見出しました(Chem. Lett., 1994)。これら二つの研究成果は国内外に大きな影響を与え,我々の他にも多くの研究機関がこのコンセプトの実現に向けて物質・システムの開発に取り組んでいます。

その他として,古い話になりますが,メタンをエタンへ電気化学的に二量化する研究も行っていました(J. Electrochem. Soc., 140, 459 (1993))。

局所電池触媒

プロトン導電性粒子に種々の反応に活性な金属触媒クラスターを担持して、これらの界面に局所電池を形成、そして自己短絡させることで、電解リアクターのナノサイズ化を検討してきました。触媒クラスターの原子レベルでの不均一性によって、プロトン導電体との界面には酸化サイトと還元サイトが存在します。反応系に還元性ガス(例えば、炭化水素等)と酸化性ガス(例えば、NOx等)が共存すると、酸化サイトがマイナス、また還元サイトがプラスに帯電した局所電池が発現します。さらに、酸化サイトで生成したプロトンはプロトン導電体内、また電子は触媒内を移動することで、局所電池が自己短絡を起こして、還元性ガスと酸化性ガスの電気化学反応が自発的に進行します。このため、従来の反応と違って、電気化学特有の電位効果が期待できます。最近の成果として、SnP2O7担体にPt触媒を担持したところ、これまでの自動車三元触媒と比較して特異的に高い活性を示し、Pt使用量を二桁低減(0.01wt%)するまでに至りました(Applied Catalysis B: Environmental, 106, 503 (2011))。

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