破棄バイオマスと廃プラスチックの資源化と材料化
資源循環型社会の実現に向けて、未利用のバイオマスやバイオマス廃棄物を利用した資源化技術が注目されています。当研究室では、バイオマスの再資源化シナリオを提案しながら、廃棄物由来の天然高分子(キトサン、セルロース、DNA )や廃プラスチックから機能材料の作製技術を開発しています。
以下は、我々が主な資源化ターゲットとしたDNAとキトサンに関する研究を紹介します。
廃プラスチック由来から機能性材料への変換技術
資源の持続可能な利用と材料の循環を確保するために、廃プラスチックを高付加価値の機能性材料に変換できる効率的なプロセスとそれらの材料の応用シナリオを構築しています。
このテーマに関する以下の廃プラスチック変換技術を開発しています。
バイオマス高分子による土改良技術
バイオマス由来ポリマーは、農業から環境・化学工学に至るまで、さまざまな分野で環境にやさしい機能性材料として利用されることが増えています。 ポリアニオン(カルボキシメチルセルロースなど)およびポリカチオン(キトサンなど)の相互作用を利用した、土壌、砂、粘土材料の改良技術を開発しています。 このようなシステムは、環境への配慮と持続可能性のために魅力的であり、土壌汚染の制御と修復のための機能的なプラットフォームの構築にも利用できます。
このテーマに関する以下の最初の成果が発表されました。
廃棄物由来のバイオマス DNA からマテリアルの作製と応用
魚の白子には多量のDNA が含まれているが、ほとんどが産業廃棄物として処分されています。近年、高純度・高分子量のDNAを多量に分離精製する技術が確立され、DNAは安価なバイオマス資源として入手できるようになりました。当研究室では、魚の白子由来のDNAから機能材料の開発を進めており,材料科学分野や環境化学分野でのさまざまな応用を検討しています。
主に,DNAを基盤とした以下の技術の開発に取り組んでいます。
- DNAを基盤とした吸着剤による重金属 (J. Hazard. Mater. 2009) 色素、医薬品環境汚染(Gels 2021)の除去および貴金属とレアメタルの濃縮・分離・回収技術 (ChemPlusChem 2013).
- DNAゲルやDNA薄膜を担体とした触媒ナノ粒子作製技術 (ACS Applied Mater. Interfaces 2014, J. Nanopart. Res. 2016, Colloid Polym. Sci. 2019, ACS Applied Bio Mater., 2021 ACS Appl. Polym. Mater. 2021).
- 高分子DNAの金属化(メッキ)によるナノワイヤーなどのナノ構造作製 (Adv. Mater. 2005, Langmuir 2011, Nanotechnology 2012).
- DNA蛍光ナノ材料の作製と環境汚染物質のセンシング(Nanomaterials 2021, Biosensors 2021)
廃棄物由来のキトサンからマテリアルの作製と応用
エビ、カニなど甲殻類や昆虫の外骨格に含まれているキチン(ポリ-β1-4-N-アセチルグルコサミン)は自然界で非常に豊富に存在します。キチンの脱アセチル化反応によりキトサン(ポリ-β1→4-グルコサミン)を得られます。現在、工業的規模でキトサンが生産されており、安価で入手できます。環境に対してほぼ無害であるキトサンは、環境浄化、医療、食品などの分野で幅広く応用されています。
当研究室では、キチン・キトサンを用いた以下の環境技術を開発しています。
- キトサンを利用したコンポジット材料(ビーズ、ゲルなど)による水から重金属イオン(Hg2+, Cd2+, Pb2+, etc.)、染料、医薬品の除去 (Chem. Eng. J. 2018, Gels 2021).
- 放射線セシウム(Cs)の除染をモデル処理法としてキトサン・ベントナイトコンポジット材料によるセシウムイオン(Cs+)の除去技術 (J. Hazard. Mater. 2019).
- キトサンを高分子凝集剤として使用した水中の人工ナノマテリアルの除去技術 (Environ. Sci.: Water Res. Technol. 2018).
- 環境に放出したナノマテリアルの移動・拡散防止のため、高分子処理による人工ナノマテリアルの固定化・局所化技術 (Chemosphere 2018) .
新研究課題・実施可能な研究課題
- マイクロ波を用いた廃プラスチック・破棄バイオマスのケミカルリサイクル技術
- マイクロ・ナノプラスチックのモデル材料の作製、自然環境におけるマイクロプラスチックの挙動解明と除去技術の開発
- バイオマス由来ナノファイバーを用いた機能性材料のデザインと創製