廃棄物からのサステナブルマテリアル

当研究室の研究は、廃棄されたもの——PETボトル、廃繊維、エビ・カニ殻、使用済み電子機器——を出発点とし、それぞれをどのようにすれば有用な機能をもつ材料に変換できるかを問うものです。有害金属や有機汚染物質の吸着材、CO2回収のための多孔性材料、地盤補強のための高分子ネットワークなどが、その成果にあたります。

こうした原料が魅力的であるのは、豊富で安価だからです。同時に、組成が不均一で夾雑物を含むことが、扱いを難しくしている原因でもあります。この両者を両立させるには化学、材料科学、環境工学の手法を組み合わせる必要があり、当研究室の研究の多くはそこに向けられています。

原料となる廃棄物:エビ殻、電子廃棄物、木くず、廃繊維、廃プラスチック、プリント基板
廃プラスチックの機能性材料へのアップサイクル
金触媒ナノ粒子(茶色の部分)で金属化された廃PET繊維素材

画像:金触媒ナノ粒子(茶色の部分)で金属化された廃PET繊維素材

従来のマテリアルリサイクルでは、再生のたびに材料の品位が低下します。当研究室では、PETを化学的に分解して明確な中間体を得たうえで、より価値の高い材料へと再構築する経路を検討しています。CO2回収のためのMOF、有害金属や色素の吸着に用いるヒドロゲルや磁性粒子、触媒ナノ粒子で機能化した繊維などがその例です。変換経路の実用性についても、生成物の特性と併せて検討しています。

海洋廃棄物からの吸着材料作製
キチンを30〜40%含むエビ殻廃棄物

画像:キチンを30~40%含むエビ殻廃棄物

エビやカニの殻は大量に廃棄されており、その30〜40%をキチンが占めます。脱アセチル化により得られるキトサンは、バイオマス由来高分子としては数少ない陽イオン性を示し、陰イオン性の汚染物質を直接捕捉できるほか、陰イオン性高分子やコロイドと安定な複合体を形成します。この性質を利用して、重金属、色素、医薬品、放射性セシウムを水中から除去するヒドロゲル、ビーズ、複合吸着材を構築しています。

廃棄物由来の炭素・吸着材
キトサンとPETの混合炭

画像:キトサンとPETの混合炭

熱分解および水熱処理により、バイオマス廃棄物と廃プラスチックはいずれも多孔質炭素へと変換され、水や土壌中の汚染物質の吸着に利用できます。当研究室ではこれらの原料を単独および混合の双方で検討しており、共処理により単独の前駆体を上回る材料が得られる場合があります。カニ殻廃棄物へのPETの添加により重金属の吸着量が向上することは、その一例です。より温和で制御された条件では、同じ化学から蛍光性のカーボンナノ材料が得られ、吸着ではなくセンシングに応用しています。

バイオマスポリマーによる土壌改良
土壌中のキトサン系補強材料のフィルム(SEM画像)

画像:土壌中のキトサン系補強材料のフィルム(SEM画像)

地盤改良には従来セメントが用いられますが、それに伴う炭素排出は少なくありません。当研究室では、バイオマス廃棄物から得られる高分子がその機能の一部を担いうるかを検討しています。キトサンとカルボキシメチルセルロースを逆電荷の対として組み合わせると、土壌、砂、粘土の内部に網目構造が形成され、力学的強度が向上します。同じ網目は重金属イオンを保持するため、補強と汚染の封じ込めを一度の処理で果たしうる可能性があります。本研究は地盤工学研究室との共同研究として進めており、室内試験から現地試験へと段階を進めています。

電子廃棄物からの重要元素の持続的回収
プリント基板(PCB)

画像:プリント基板(PCB)

電子廃棄物には、天然鉱石をはるかに上回る濃度で金をはじめとする貴金属が含まれています。課題は、従来用いられてきた強い薬剤に頼らずに、これらを選択的に回収することにあります。当研究室では、浸出液から金を選択的に抽出する有機溶剤と、廃PETから調製した吸着材による溶液中の金属回収の両面から取り組んでいます。太陽光パネルも、今後重要性を増す廃棄物として視野に入れています。

  • 有機溶剤を用いた電子廃棄物からの金の選択的回収(Sep. Purif. Technol. 2026
  • 廃PET由来の金属吸着材を用いた電子廃棄物浸出液からの有用金属回収
共同研究

当研究室の研究の多くは共同研究として進めています。新規の共同研究、試料交換、研究者の受け入れについてご相談ください。

スケールアップの共同研究先を募集しています。ラボスケールで確立した廃棄物変換技術(廃PETボトルからのCO2回収材の直接合成など、一部は特許出願中)について、実用化に向けた企業との連携を検討しています。LCA(ライフサイクルアセスメント)の共同研究先も募集しています。開発した技術の環境負荷を定量的に評価するため、LCAの知見をお持ちの研究者・企業を探しています。

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