当研究室では、廃棄物のリサイクルおよびアップサイクルを通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。バイオマス廃棄物から得られる天然高分子は、次世代の材料開発における再生可能で環境負荷の少ない構成要素として注目されています。また、深刻化するプラスチック汚染の問題に対応するため、廃プラスチックを機能性原料へと変換する革新的な手法の開発にも取り組んでいます。
化学、材料科学、環境工学といった分野を横断的に融合し、水処理用材料、触媒システム、環境センシング、地盤改良材など、さまざまな応用を視野に入れた機能性材料を設計しています。創造的なサイエンスと持続可能な発想に基づき、廃棄物を「環境への負担」から「未来の解決策」へと転換することを目指しています。
画像:金触媒ナノ粒子(茶色の部分)で金属化された廃PET繊維素材
資源の持続的利用とマテリアル循環を実現するために、廃プラスチックを高付加価値の化学品や材料に変換する効率的な技術が求められています。当研究室では、環境・土木分野に応用可能な機能性材料の製造を目的とした変換技術の開発を行っています。
画像:DNAを約10%含むサケ白子廃棄物
DNAは、水産業の副産物である魚精子(白子)から抽出可能です。DNAの特異な化学構造は、金属イオンとの結合や金属ナノ構造の構築に適しており、ナノエレクトロニクスや触媒用途に活用されています。最近では、DNAヒドロゲルの設計と応用に特に注力しています。
画像:キチンを30~40%含むエビ殻廃棄物
キチンは、エビやカニの殻などの海洋廃棄物から得られる安価で豊富な多糖類です。キトサンはキチンを脱アセチル化して得られる陽イオン性の高分子で、食品、化粧品、環境分野で広く利用されています。バイオマス由来高分子としては珍しい陽電荷を持ち、陰イオン性の高分子やコロイドと組み合わせて多様な機能性システムの構築が可能です。
画像:キトサンとPETの混合炭
プラスチックおよびバイオマス廃棄物から、加水分解や熱分解によって炭素材料を得ることができます。高い多孔性を持つ炭素材料(チャー)は、水や土壌中の汚染物質の吸着除去に応用されています。また、有機廃棄物の制御分解により、カーボンドットなどのナノ炭素材料も合成可能で、金属イオンや有機汚染物質のセンシングに利用されています。
画像:土壌中のキトサン系補強材料のフィルム(SEM画像)
バイオマス由来高分子は、農業、環境、化学工学など様々な分野で環境にやさしい機能性材料として注目されています。当研究室では、バイオマス廃棄物から得られる再生可能な高分子を基盤とした処理剤により、土壌、砂、粘土の改良技術を開発しています。これらのシステムは環境負荷が小さく、土壌汚染制御のための機能性プラットフォームとしての活用も期待されています。